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近道を突き抜ける 





 住まうところの前には昔の幹線道路の県道であったが、その道を挟んで並びの数軒左手には「日蓮宗」と斜め前には「浄土真宗」の寺がある。その寺域には季節になるといろいろな花を咲かせる、左手の寺の参道には桜木が植わっているが、いま盛んなのは梅、蝋梅だ。漆喰の塀に瓦を乗せを巡らせている真ん前の浄土真宗の寺の松の枝が被さる門をくぐると向こうは住職の宅になりこの季節の花の咲く樹木の何が植わっているかは見たところない。季節の花の景色がないのはちょっと寂しいのだがこの寺の境内の撞かれることもなくなった鐘のぶら下がる鐘楼と本堂の建物の間の敷石を踏みながらグルっと回り込むと新旧の墓石が並んでいる。その墓石に彫られた文字は「○○家」というものは最近の墓石だがうっすらと苔の貼りついたような雨に濡れれば緑色に見える古い墓石も文字は「南無阿弥陀仏」でその下に「○○家」、と横文字になっていて時代で流行り廃れがあるかもしれない。彼岸近くになるとよくクレーン車が来て墓の整備をしたり、納骨のために墓石などを吊り上げたりしている。次第次第に並ぶ墓石は新しくなったり、代々の墓の墓終いをしたりして昔からあったであろう、墓地が他家用に整地されて、「分譲」されるのだろう。                                        でも、空き場所が開いたままになっているところもある、増えてきたような気がする。もはや仏教とは縁が遠くなり、お墓を求めて、そこに歿後の住所を置く、ということはしなくなってきて一生一代でおしまい、という世代が多くなってきている。
 この墓の中を横切って狭い寺域ではあるが坂になり下りていくと向こう側に出られる近道なので、「家」、「家」の墓石に刻まれた文字を眺めながら下っていく。その何年も前に亡くなられた一族・一家の戒名や歿年などを細かく眺める。この寺は、近くにある小さな城跡「M山」は、その城主、松平藩に関わる寺として由緒があるようだ。しかしその城主に関りにある人の墓地はない。この寺の銘板に記された由緒には1590年頃にこの地にこの寺が開山された、とある。徳川家康が関東入国とともに松平家広が入城し松山藩を立藩した時代ごろに設置された寺という由緒書きに(歴史のある寺だ、ということを伝えている)、住職の代々の戒名が連なっていて今は14代になるらしい。
 墓石を読むとその戒名というのか法名に「釋」が多く、既に墓石が時代の風で劣化して脆く擦り減ったようなところにみえる。浄土真宗の寺であることは山門の大きな表札からもわかるのだが、檀家の多くの歿者の戒名からもわかる。
 墓石を眺めてはあの時代にこの歳まで生存したのか、と100歳を超える没年も読み取れるし、幼くして亡くなった二人三人の子供には「童」がつけられた死者の多い時代も読み取れる、この周辺に多くある特徴ある苗字の墓石を見ると古くからこの辺りに住み着いていた古い一族の墓なのか、とか様々な思いを持つ。たまに親族が来て生花を添え,お線香を手向けているとその煙が細くそのあたりに漂っていたりする。小さな墓所ではあるが下り終わる途中に木瓜の蕾がついていたり、枯れた蒲の穂が立っていたり菖蒲などが植えれた池が作られていて、ちょっとでも人間が通る気配などをわずかな地面の響きでも察知したのか太く成長した黒い鯉が何匹も餌を求めて口を開けて寄ってくる。何かを放り投げるとその動きは急であるが、”なあんだ”、と期待外れであるとまた水面から潜りながら散っていく。その池から下に細く流れる水路があって時期になると三つ葉が生い茂っている。このゆっくりと流れてくる水は寺のどこからか湧き出ている水に違いなくそこにはザリガニが住んでいるようで夏には子供がザリガニ釣りをしていたりする。水路を流れ落ちた水は下に整備された水たまりができるようになっていて睡蓮が植わっている。やはり仏教には蓮の花ー蓮華が相応しいのか。
 そんな墓石の立つ間の細い近道、あの世への近道ではない、買い物に行くためにショートカットする墓地の中の近道である。そして墓石、墓銘石(石版)を眺めながらあれこれ思う。戒名は「釋」を頭に生前の何かかかわりのある文字から二文字を選ぶのだが、墓石に彫るべきの二文字で故人を偲ぶとしたら遺族は何にするのか、仮に浄土真宗だとしたら・・・。坂を下りきる前に「釋釣〇」という新しい墓名の個人名が彫られていたのがあった。生前はあの人は釣りが好きだったからなあ、と。そんなことを思いながら終活のことがまた、頭をよぎる。先祖は浄土宗の寺に納まっている。父は「〇誉〇善保〇居士、母は大姉でいずれも共通する文字の入った戒名だったな。
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