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 2014年06月 

庭木の話。 

銀梅花


曇天で今にも降りそうな、それでいて曇天でもっているという空模様で、午前中、7時過ぎには畑で好き放題に伸び放題の雑草の始末を三時間ばかりしてきたのだが、午後は久しぶりに古本屋さんに出掛けて世間話をしつつ目は棚に向いて何か新しいものを並べたか、と点検をする。店主が新たに仕入れてきている袋の本を机に並べてはこちらの関心を引こうとするのがよくわかる。
この頃の店主はこちらの関心を引く領域、作家などを気にして積んだ本の山から「N井龍男」の雑文集「ネクタイの幅」を見せて、こっちはまだ読んでないのだが、と言いつつ薦める。前回もこの作家の「カレンダーの余白」をこの手にかかって求めたのだが(探していた本)、今日は本の外函が茶色く陽にやけたものだから、と“350円”という値段を箱の裏に鉛筆で書く。
この作家の雑文は好きで何冊かを読んでいるのだが「ネクタイの・・・」は昭和50年6月16日第一刷発行、とあるからぴったし40年前のこの時期に出版されたものである。
暇人の行動をからかう四文字7音の“晴耕雨読”ではないが午前中は草取り、午後は読書、という過ごし方に適当な(気楽な)本、である。早速2階の自室の椅子にだらりと足を投げて読み始めると、ちょうど今時分のエッセイがあって、ちょっと待てよとばかり姿勢を正して読み始めたのは作家の住んでいる(鎌倉文士である)地元新聞に昭和47年6月15日に掲載された「梅雨の仕事部屋」という短文である。邸宅と思しき庭の様子を2階の自室から「・・・ここ1週間、仕事部屋の窓下に見えるびわの実が、日増しに色づいてきた。まきその他の新緑を背景に、豆ランプでもつけたように、その辺りが明るい。」と書いている文章は梅雨時の多分広い庭に植えられた様々な樹木を観察しており「梅雨時のうっとうしさはいうまでもないが、その代わり樹木の美しさは一年中で一番、樹という樹が、生きる喜びを全身で示している。」、という文章には全くその通りで、鎌倉の大邸宅にはとてもおぼつかないがこちらの狭庭は狭いながらも偶に猫が抜ける通路となっている庭のさまに、似たような感慨を持つのだ。
隣家の裏庭に植わっている枇杷の樹は年初の大雪で枝をかなり折ってしまったがそれでも残った枝にはまさに黄色の豆電球のようにたくさんの実がなっていて間もなく旬を待っていたヒヨドリの餌場となるのだがまさに同じような風景である。そして樹木のこの一時の美しさは蚊の攻撃のしつっこさを厭わなければ樹下で眺めたい、様々な樹木の葉の緑のグラデュエーションはなかなかのものである。2階からながめてみれば左からの前列に「夏椿」「山法師」「柘榴」と中木が屋根に被さり、右手に目を振れば「常緑山法師」「カツラ」「ナナミの樹」「銀梅花」「クロガネモチ」等々が見える。今の楽しみは柘榴の赤い花であり、常緑山法師の白い十文字の花であり、銀梅花の白くて細い糸様の雄蕊の花である。これらを楽しみにして狭い庭に窮屈に植えたのだが、それらの花と鮮やかな緑葉を楽しめるのはこの時期だけである。
「花を咲かせた隣のタイサンボクにも、わが家のタイサンボクにも、ご苦労さまと声をかけたい気がした」とあるがこのタイサンボクを植えてある家、その花が楽しめる家とは羨ましい。この樹は大変高く成長し、葉も硬くて大きく、花がほかの樹木の花にこれほどの大きさの花が付くか、と言えるほど断然大きくてその白い花が咲き乱れるさまは遠くから見ても、「泰山木」とわかる立派な樹なのだ。桜と同様大きな庭の面積を持ち、その拡がる樹勢を許容する庭にあって映える常緑樹なのだ。
この雑文に続く「わが池辺」という雑文もやはり梅雨時の事柄で「毎年梅雨になると、食用蛙になやまされる。」という文章で始まっている。タイサンボクの樹のみならず、蝦蟇がうるさく、淡水魚の「はや」が来る池まである、結構な屋敷である。樹種を並べることはできたが蛙のいる池となると、こちらは何も言えなくなってしまう。
今年の梅雨のしょっぱなには豪雨の日が続いた。そして今日の夕刊を見ると本来は梅雨という気候がないといわれている北海道では12日間も雨が降り続いている、とある。梅雨入り前に本土では40度近い猛暑日があったりと、地球環境が変化して天候が最近おかしいよなあ、という会話が挨拶がわりになって久しい。それは畑の作物の成長具合(ルバーブは早くに茎が萎れてしまった)や、庭の樹木の花の付け方(異常に多い)を見ても(たとえば銀梅花の花の多さは今までにない)温暖化という異常気象の徴候が当てはまる。
鎌倉のN井邸の、作家当主が植えた(と思う)樹齢7・80年にはなるだろうタイサンボクの今頃は立派な姿となってより沢山の花を付けただろうか。
当分、梅雨明けとはならないだろう。この作家の雑文集を手にする“雨読晴耕(時たま午睡)”日と時間はたっぷりありそうである。

*今年は異常に花が多い地中海原産といわれる「銀梅花」
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